インキュベーション・マネジャー 一尾 香
こういうと身構えてしまうかもしれませんが、「ビズ・スクエアよっかいち」を通じて起業者やビズカフェよっかいちの参加者の方々と日々接していると、事業がスムーズに進む人とそうでない人との差がいくつかあるのに気づきます。その一つをご紹介します。
事業がスムーズに進む人は自然体でムリがない。
と言っても「あるがまま」とか「頑張らない」ということではありません。
例えば事業の柱に何を据えるか。
どういう分野で事業を行うか。
誰に・何を・どのようにして提供するか。
(これらを「事業ドメイン」ということもあります)。
やりたいことを事業にする場合、それができる力を自分が持っているか。自分を客観的に見てその力がない場合、その事業にはムリがあり、自然体ではないということです。
例えば――
「自分が欲しい〇〇が世の中にないから自分で作って売りたい。自分と同じように欲しがっている人はいるはず。だから買ってくれるはず。」
〇〇に入るものは違いますが、こう掲げて起業を目指す方がいます。
たしかに、自分が欲しい〇〇についての強い思いがあり、自分が思う理想の〇〇を作ることはできるかもしれません。でも、それを事業として起こし継続するために必要な力を持っていなければ、それは「ムリがある」ということになります。しかし、残念ながら自分の至らなかった部分を省みず、受け入れない世の中を恨みながら事業を閉じる人もあります。
ムリを感じる場面でもう一つよくあるのが、補助金を受けたいという場合です。
補助金に応募して採択を受けた申請書(企画書)は、「何のために、どのように、何をする」のストーリーが自然でムリがありません。
残念ながら、補助金を受けることが先にあり、そのために事業を無理やり立ち上げたり、極端なケースだと事業プラン自体をまるごと提供すると言って売り込む自称支援事業者もあったりします。このような例を見ると一体何のための補助金なのかという疑問しか浮かびません。
もちろん、やりたいことが先にありそのために利用する補助金なら、それは本来の姿であり、ストーリーはおのずとできてくるはずで、あとは体裁を整えることに注力するだけです。
そうやってムリなく、というよりムリと思われないレベルにまで力を尽くす。時には歯を食いしばってでも耐える、その覚悟を持つ。これが起業に必要な心構えの一つだと感じています。